PGT-A(着床前診断)について
着床前診断(PGT-A)についてご存知ですか?
着床前診断とは、体外受精で得られた受精卵の染色体の数を全て調べ、問題のないものを子宮に戻す検査です。
日本産婦人科学会(日産婦)は、2022年1月9日、不妊治療の一環として2022年4月から開始することを決めました。
今までは研究目的としてしか実施することが出来ませんでしたが、ようやく日本でも不妊治療の一環として認められる日が近づいてきています。
妊娠率が約2.2倍?!着床前診断ってどんな検査?
2019年12月、欧州ヒト生殖医学会誌に驚きの研究結果が発表されました。
着床前診断を受けた人と、受けていない人でテストを実施した結果、着床前診断を受けていない人に比べて、着床前診断を受けた人の妊娠率が約2倍近く向上したという研究結果が発表されました。※1
※1 着床前検査を受けた群では胚移植あたりの妊娠率が68.9%(31/45)、受けない群では30.8%(24/78)で、着床前検査を受けることで胚移植あたりの出産率が統計的に有意に向上したと報告しています。なお、流産率については症例数が少なすぎて有意差は検出できなかったとしています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31811307/
数値だけみると、疑いたくなるような数値ですね。
何故、ここまで差がついたのでしょうか。
実は、妊娠初期の流産の原因で最も多いものは胎児の染色体異常なんです。染色体に異常があることが妊娠前にわかっていたら…
妊娠率が向上する理論はわかりますよね。
染色体異常が原因の流産のリスクを軽減することで、妊娠率を向上させることが期待できる検査なんです。また、治療の回数軽減も期待されています。
着床前診断(PGT-A)と出生前診断(NIPT)の違いは?
最近よく聞く出生前診断(NIPT)と違うのか?と疑問を持たれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
よく似ている言葉ですが、まったく違う診断です。
「着床前診断」は、”妊娠前”に受精卵(胚)から染色体異常を調べる検査で、
「出生前診断」は、”妊娠後”に採血(血液)から染色体異常を調べる検査になります。
タイミングも方法も異なりますが、それぞれの目的の違いが最も重要で、
「着床前診断」は、染色体に異常があり、着床の可能性が低かったり流産につながる可能性が高い受精卵の移植を避けることで、妊娠率・出産率を向上させることが主な目的として行われることに対し、
「出生前診断」は、出生前に胎児の状態や疾患等の有無を調べておくことによって、生まれてくる赤ちゃんの状態に合わせた最適な分娩方法や療育環境を検討することを主な目的として行われます。
そして、着床前診断は妊娠前に検査を行うので、夫婦の心身の負担は少ないかもしれませんが、
それに比べて出生前診断は妊娠後の検査なので、万が一染色体が異数性だった場合、夫婦に委ねるにしては重すぎる決断をしなければならないこともでてくるでしょう。
アメリカではここまで進んでいる?!アメリカの着床前診断の状況
アメリカには、着床前診断に関する規制する法律はありません。原則個人の判断に委ねられています。
さかのぼること1980年代から着床前診断の研究と臨床を行い、今もスタンダードな検査として活用されている検査の一つです。
不妊治療の一環としてはもちろん、『ファミリーバランシング(Family Balancing)』の目的での男女産み分けも容認されています。(健康な第一子をすでに授かっていて、第二子以降の妊娠を試みる場合のみ、夫婦が希望する性別の受精卵を移植)
にわかに信じがたいですが、アメリカはここまで進んでいるんです。
要するに、科学の力を使って不妊の悩みや、男女産み分けの悩みなどを解決できる時代はもうそこまで来ているのです。
日本の現状
ようやく、日本も不妊治療の一環として着床前診断を実施することが認められ始めてきていますが、実はまだ制限が課せられています。
検査を実施する条件
- 流産や死産を2回以上経験
- 体外受精が2回以上失敗
- 夫か妻に染色体の構造異常がある
上記のいずれかに該当しないと、現状検査を実施することはできません。(2022年1月12日現在)
正直、この条件に思うことがある方は多いと思います。
この条件に到達する前に諦めてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
もちろん、判断をするのはご本人です。
ただし、望んでいる方が受けることができないことは避けるべきだと我々FeeMoは考えております。
皆さんが望む世界が訪れるように、私たちも尽力して参ります。