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【かしわざき産婦人科】柏崎副院長に独自取材“不妊治療の主役はご夫婦です”

目次

大宮駅から徒歩約15分、県道214号線沿いに位置する「かしわざき産婦人科」は、不妊科と産婦人科を併設する個人クリニックです。院長夫婦がクリニックを立ち上げ、現在は主に副院長夫婦が診療を担当しています。不妊治療から出産まで、患者さんのライフステージに合わせて総合的にサポートしています。

近年は、16人に1人の新生児が体外受精で生まれており、不妊治療のニーズが拡大しているそうです。今回、同院の柏崎祐二副院長に、不妊治療の現場の様子や今後の業界の動向について、お話を伺いました。*1

不妊治療から出産まで、総合的にサポートする産婦人科クリニック

Q 開放的な明るいロビーが印象的ですが、こだわったことを教えてください。

当院は、2000年に建物をリニューアルしました。「温かみあるクリニック」をコンセプトに、赤やピンクといった暖色を基調に設計したと義母や妻から聞いています。

ロビーは、吹き抜けにして、開放的で、自然の光が取り込みやすいデザインにしているのが特徴ですね。それと、患者さんの退屈しのぎにと設置した水槽が意外と好評で、熱帯魚の専門誌から取材がきたこともあるんですよ。

不妊科と産婦人科を併設する当院では、小さなお子さんを連れた方も来院するので、患者さんの気分転換のひとつになればと思っています。

Q 副院長がご夫婦で診療をおこなっていると伺っています。

そうですね。現在は、私が不妊治療を担当しています。もともと、私は、日本大学医学部付属板橋病院の産婦人科医局に勤務していて、不妊治療を専門としていました。

その経歴もあって、リニューアルしたタイミングで医局を離れ、当院で診療をはじめたんです。

産婦人科治療は、妻が担当しています。それと、義理の両親も周産期医療のベテランなので、夫婦2人をサポートする形で診療を支えてくれています。

Q 同じ建物内で「不妊科」と「産婦人科」を運営するのは、よくあることなんですか?

出産自体がリスクを伴ったり、24時間の救急体制をとる必要があるため、個人のクリニックではめずらしいですね。
最近では、出産する方も減ってきているため、出産に対応する個人クリニックは全国的に減ってきています。

また、不妊症の患者さんのなかには、「待合室で妊婦さんや子どもの姿を見るのがつらい…」という方もいっらしゃいます。どうしてもつらいという方は、近隣の不妊クリニックを紹介しています。

患者さんには、「遠慮せず、ざっくばらんに言ってくださいよ」とも伝えています。

一方で、逆に励まされるという患者さんもいらしゃいます。妊婦さんや子どもの姿を見て、自分も妊娠したらここで産みたいとね、勇気をもらえるようです。

実は、産婦人科を受診する妊婦さんは、半分くらい当院で不妊治療を受けた方なんです。

そうなると、クリニック側も患者さんの情報を把握できているので、スムーズに不妊治療から産婦人科治療へ移行しやすいです。

不妊治療の専門医として、ご夫婦の意思決定をサポート

Q 不妊治療は、いつ頃から始められたんでしょうか?

当院では、2000年に不妊治療を導入しました。当時は、不妊治療のニーズがあったのですが、近隣に不妊科を標榜する医療機関がなかったので…。

それで、やってみようとなったわけです。導入当初に比べると、近年は、不妊治療を希望する患者さんが明らかに増えていますね。最近のデータでも、16人に1人が体外受精で生まれた新生児となっています。 *1

また、2021年1月1日には、特定不妊治療(体外受精や顕微授精)を受けられる対象者の所得制限が撤廃されました。

この制度改正を受けて、ますます不妊治療を希望する患者さんが増えた印象です。さらに、詳細な条件が決まっていませんが、2022年4月から不妊治療が保険適用になります。

いずれにしても、患者さんの経済的負担が少しでも減れば、嬉しいものです。

Q 不妊症の患者さんは、どのようなタイミングで受診する方が多いですか?

人によりますね。

まず、当院を初めて受診する不妊症の患者さんは、約8割が35歳以上の方です。

子作りをはじめて1~2ヵ月で妊娠しなかったらすぐに受診する方もいれば、2~3年経って受診したといったように、受診のタイミングは、さまざま。共通して言えるのは、早ければ早いほど良いのが不妊治療です。

妊娠率は、年齢を重ねるほど低くなりますからね。例えば、1人目の出産が自然妊娠だったとしても、2人目の時は卵子が老化したり、生殖器に問題があったりして、妊娠しにくい状況になっている方も少なくありません。

以前、1人目を体外受精で妊娠・出産して、2人目、3人目と順調に子どもを授かれたというケースもありましたが、そういうケースはとても稀ですね。

なかなか妊娠せずに悩んでいるのなら、早めの受診をおすすめします。

Q 柏崎副院長が、不妊治療で大事にされていることを教えてください。

私が、不妊治療でもっとも重要視しているのは、ご夫婦の意見を一致して治療に向き合うことです。

よくある例としては、妻が不妊治療に積極的である一方で、夫が治療に消極的であるケースです。こうなると、お互いに温度差ができ、精神的に支え合うことができないですし、夫婦の間にわだかまりが生じます。

私は、不妊治療において、専門的な検査や治療をおこなったり、患者さんの気持ちに寄り添ったりするのが、医師の役割だと考えています。

治療するのか、どのステップまで治療を継続するのか。治療の開始・中断・終了は、主役であるご夫婦で決めることです。当院の患者さんには、「人生設計も含め、どこまで治療するかご夫婦で十分に相談してくださいね」と、事あるごとにお伝えしています。

治療の不安や疑問を解決し、できるだけ妊娠の可能性を広げたい

Q かしわざき産婦人科の独自の取り組みは、何かありますでしょうか?

当院では、通常の診療に加え、不妊治療の説明をしたり、患者さんの相談にのったりする機会を多く設けています。不妊治療には、不安や疑問がつきものですからね。

妊活学級は、培養士や薬剤師・不妊カウンセラーの資格を持つ看護師といった専門職が講師となり、体外授精などについて説明します。最近は、患者さんもすごく勉強されているので、講義終了後の質疑応答も盛んですね。

また、患者さんによっては、「子宮筋腫」や「子宮内膜症」といった疾患があり、手術が必要な場合もあります。

手術となれば、妊娠できるようになるまで期間が空いてしまうので、将来的な体外受精に備え受精卵の凍結が必要になるケースもあります。

このように、手術と体外受精が関わってくるケースでは、私がカウンセリングを担当しています。

Q アメリカのクリニックを紹介するケースもあると伺いました。

特殊なケースではありますが、卵子がないとか、体外受精を数十回実施しても妊娠の見込みが少ないといった場合は、サンフランシスコにある提携クリニックを紹介しています。

現地のクリニックでは、日本で承認されていない卵子提供による不妊治療が可能です。

サンフランシスコのクリニックを仲介するコーディネーターが日本にいるので、本来ならば現地に行っておこなわれなければならない検査も、事前に日本で実施が可能です。

アメリカでドナーが見つかったタイミングで、現地でドナーの卵子と夫側の精子で受精卵をつくり、それを妻の子宮に入れるという流れです。

妻は、自分の遺伝子が入っていませんが、妊娠と出産を経験することで母性が芽生えるようなんです。もしかすると、近い将来、日本でも卵子提供が承認されるかもしれませんが。

ともかく、患者さんに妊娠の可能性があるなら、できる限りのサポートができればと考えています。

Q 今後の不妊治療の動向について、柏崎副院長のお考えを教えてください。

世の中的に、着床前診断(PGT-A)がだいぶできるようになってきています。

ご存じかもしれませんが、着床前診断とは、受精卵の染色体を調べて、正常な染色体の受精卵だけを残す検査のことです。患者さんとしては、この検査をすれば着床率を上げたり、流産のリスクを下げたりと妊娠しやすい状況がつくれるんですね。

いままでは、遺伝性疾患の方が中心でしたが、最近では、何度も流産している人にも着床前診断が適応となるケースも出てきています。

アメリカでは、受精卵の細胞の一部を採取し、検査会社に送付すれば着床前診断ができる、という制度ができかかっています。

日本の不妊治療でも、これから着床前診断の範囲が拡大していくのではないでしょうか。

肩の力を抜いて、治療を進めていただきたい

Q 先生の仕事や人生におけるモットーは、何でしょうか?

「人生楽にいきましょう」これが私のモットーです。特に、不妊症の患者さんは、治療に熱心になりすぎてほかの物事が見えなくなったり、強いストレスを感じたりしがちです。

例えば、バリバリ働いていた人が「不妊治療に専念する」といって、いきなり仕事をやめてしまうと、一日中治療のことで頭がいっぱいになり、うつになってしまうということも。

ひとつの物事しか見えなくなると、気持ちに余裕がなくなってしまうものです。

患者さんにも、「力をつくせば結果はついてくるよ」といったぐあいに、肩の力を抜いて、治療に向き合ってほしいですね。

Q 最後に、読者の方にメッセージをお願いします。

不妊治療の主役はご夫婦です。我々、医療従事者は、道しるべをつくって、そこに向かって進めるように助けるだけです。

ですから、人生設計も含めて、ご夫婦でしっかりと話し合って治療を進めてください。

また、いまは、ホームページやブログで、色々な方が不妊治療について情報発信しています。不妊科の受診を検討されている方は、受診のハードルを下げるために、そのような情報を参考にするのもひとつの方法です。

ただし、情報が多いので、あまり振りまわされないように。

不妊で悩んでいらっしゃるようであれば、いつでもお待ちしておりますので、お気軽にご相談ください。


医療法人かしわ会かしわざき産婦人科

〒330-0855
埼玉県さいたま市大宮区上小町604-4

公式サイトはこちら


<参照>
*1体外受精児、16人に1人過去最多も治療支援に課題

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